限定承認って??
プラスの財産もマイナスの財産も無条件に相続することを単純承認といいます。一方で、限定承認とは、「プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(債務)を相続する」という方法です。従って、債務の方が多い場合には限定承認が有利だと、誤解している人も多いようです。
まず限定承認の怖さの前に手続きについて簡単に説明します。
限定承認は手続きが煩雑
限定承認は、相続開始(被相続人の死亡)から原則として3か月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申し立てしないとできません。
ということは、相続開始から家庭裁判所への申請により延長も可能ですが、原則として3か月以内で相続人全員の意思決定をしなくてはいけないのですから、相続財産の把握をスピーディーかつ正確に行わなければなりません。
ちなみに、被相続人の死亡前から債務が多いことを知っていれば、通常相続放棄の手続きをします。
なぜ限定承認は怖いのか?
債務の方が多いということは、通常相続しても相続税は発生しません。つまり「ゼロ」です。しかし、税金の種類は相続税だけでなく所得税もあります。税法では、限定承認して財産を相続した場合には、被相続人から相続人に時価で譲渡したものとみなして所得税が課税(みなし譲渡所得)される場合があります。
相続税は、プラスとマイナスの財産を相殺した残高で判断しますが、みなし譲渡所得は固有の財産そのものに含み益があれば課税されます。結果、限定承認したことでかえって税金が増える場合があるのです。
もう少し、限定承認について考えてみる
もう少し限定承認について掘り下げてみます。東京23区内では、昭和30年代~40年代に取得した土地にその土地を担保に自宅兼アパートを建設している場合があり、相続時点はプラスの財産よりも借入金が多いときもあります。
当該土地の含み益は大きいため、限定承認した場合は莫大な税金が発生することも少なくありません。
一方で、相続時点では借入金の方が多くても、しっかりシミュレーションすれば、現状の賃貸収入で比較的短い期間で返済できる場合もあります。
結局、どうすれば良いのか
結局限定承認のメリットを享受するには、私見では
- 相続財産の早期把握
- 各相続人の意見調整
- しっかりしたタックスプランニング
が大切だと考えます。
このように限定承認はメリットもあればデメリットもありますので、必ず当事務所のような専門家に相談することをおすすめします。