贈与税の暦年課税と相続時課税制度の異同

父母又は祖父母からの贈与税の課税方法として「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類があることは広く知られていることと思います。
今回は、これらの制度がその後の相続税の計算にどのような影響を及ぼすかを比較してみたいと思います。

「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の差異項目とその内容

項目 暦年課税制度 相続時精算課税制度
受贈者の年齢制限 問わない。 贈与を受けた年の1月1日で20歳以上。
贈与者の年齢制限 問わない。 住宅取得用資金以外の贈与の場合は贈与した年の1月1日で60歳以上。
受贈者の属性 問わない。 贈与者の子や孫に限られる。
贈与税額の計算 (財産の価額-110万円)×10%~55% (財産の価額-2,500万円(注))×20%
(注)複数年に亘って行われる場合は残額が限度。
相続税財産への持ち戻し 相続又は遺贈により財産を取得した場合に限り、相続開始前3年以内に受けた贈与財産が持ち戻しの対象となる。 必ず持ち戻しされる。
相続税に贈与税の精算 贈与税相当額は相続税から控除されるが、控除しきれなかった贈与税は切り捨てされる。 贈与税相当額は相続税から控除され、控除しきれなかった贈与税は還付される。
他制度への変更 相続時精算課税制度への変更は可。 一度選択したら、暦年課税制度に戻れない。
相続税の申告義務 相続又は遺贈により財産を取得しない限り申告義務はない。 相続又は遺贈により財産を取得していなくても申告義務がある。

ご紹介

各制度を利用するメリットを各1つ紹介したいと思います。
相続時精算課税制度は、相続税から控除しきれない贈与税が還付されますので、死期は近いが判断能力はしっかりしている方が生前に多額の現預金を贈与したい人がいるときに利用することで、スムーズな財産移転を図りつつ、払いすぎた贈与税があれば相続税と相殺することが可能になります。
一方で、暦年課税制度は、相続又は遺贈により財産を取得した者が3年以内に取得した財産が相続税の持ち戻しの対象となりますので、相続又は遺贈により取得した財産が全くなければ、持ち戻す必要はございません。そこで、被相続人が生前に孫に贈与し、かつ遺贈する旨の遺言を残していた場合は、孫はその遺言を放棄することで生前贈与加算の対象とならずに、相続税が軽減できる場合もあります。

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このコラムは、平成28年10月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
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