オーソドックスな相続税対策
生前贈与は①比較的簡単に実行に移せ、②税制改正の影響も少なく、③専門家を必要としないため、数ある相続税対策の中で最もオーソドックスな対策です。贈与税の非課税枠(年間110万円)を目安に行うため1回あたりの節税効果は小さいですが、毎年繰返すことによりその効果が大きくなります。
国税庁の統計資料によりますと、贈与財産で最も多いのは現預金で全体の3分の1以上を占めます。現預金は、登記なども必要が無くもらった方も他の財産に転化しやすいことが要因と思われます。
相続税の申告漏れ財産
一方で、相続税の調査における申告漏れ財産で最も多いのも現預金で全体の3分の1以上を占めます。
この要因はなぜでしょうか?
贈与したつもりが贈与とみなされない場合も...
親が子に現預金を贈与する際に取られる方法に、子名義の口座に振り込むことがあります。この子名義の口座ですが、実際にその子自身が管理・運用していれば、問題ありませんが、そうでないと名義預金として相続財産に含まれる場合があるからです。
名義預金の判定基準は?
では、税務署が考える名義預金基準とはなんでしょう?次に掲げる事項に該当している場合は、名義預金とみなされる可能性があります。
☑使用印鑑
子名義口座の通帳届け出印と自身の通帳届け出印や、子に兄弟姉妹がいる場合に兄弟姉妹名義の通帳口座の届け出印がすべて同一である
☑ 管理保管状況
通帳や印鑑を被相続人が管理保管し、相続人はその存在すら知らない場合
☑ 贈与税の申告の有無
多額の資金を贈与したにもかかわらず贈与税の申告をしていない場合
贈与のメリットは?
相続は、遺言を残しておかない限り、特定の相続人に財産を相続させることができませんが、贈与は自らの意思にそった財産移転が可能となります。この点が贈与のメリットといえます。
相続税と贈与税の税率差異を利用する
相続税の税率は、課税価格が1億円を超えるとその超えた金額に対しては40%以上の税金がかかります。一方で、1億円超の金額のうち310万円を生前に贈与した場合の贈与税の税率は10%です。生前に贈与することで、この税率の差分の税金を節税でき、かつ自らの意思にそった財産移転が可能となります。
孫に贈与した場合はさらに特な場合も?
子が存命でその孫に相続又は遺贈した場合は、相続税が2割増加しますが、贈与税にはこの2割加算の規定は無いので、孫に生前贈与した場合は、さらに節税ができる場合もあります。
他に効率が良い生前贈与のポイントは?
例えば次のようなことがあります。
☑高収益資産を贈与することにより、その収益部分が受贈者に移転する
☑ 将来値上がりが見込める資産を贈与することは、値上がり部分を相続財産から除外するのと同じ効果がある
なお、贈与する際は、贈与税以外の移転コストも含めて有利不利を判定することが肝要です。
実は相続人への教育が一番大切
生前贈与の目的は、税金もコストであるため、より多くの財産を子孫に残すことであると思います。そのために苦労して贈与や相続させても、その子孫が財産を無駄に費消してしまっては意味がありません。実は、相続対策で一番大切なのは、相続人への教育であるということを忘れてはいけません。
このコラムは、平成25年3月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
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