地主と建築主の組み合わせによる効果

親所有の遊休地を更地やコインパーキングのまま所有していると相続税の評価は高くなります。
そこで、収益物件の建物(アパートやマンション)を建てて節税を図るプランがあります。
収益物件にするのは、建築資金は借入になることが多く、収益物件からの収益で返済するためです。
ところで、この収益物件の所有者は誰が良いでしょうか?
考えられるのは、①親 ②子供(ご自身) ③子供が株主の法人 ④親が株主の法人 といったところでしょうか?
 
そこで今回は、所有者を「親」にした場合の効果について私見を述べてみたいと思います。

更地に賃貸用不動産を建てる効果

地上にご自身が所有する賃貸用のアパートやマンションがあると、その土地(貸家建付地といいます)は借家人から一定の制限を受けるため、その制限度合いに応じて、更地で所有しつづけるよりも、土地の評価は下がります。
さらに、アパート等の建物も貸家となり評価が下がります。
このことに着目して、更地の上に賃貸用アパートなどの収益物件を建てるのです。

では、どのくらい下がるのか?

相続が発生したら、その発生したときの時価で評価することになっていますが、土地や建物については、課税上弊害が無い限り、財産評価通達で評価することができ、一般的にその評価は更地や、建物の購入価額よりも低くなります。
具体的には、建物は、時価の50%~70%程度になるように設定されている固定資産税評価額を用いて評価できます。さらに建物を貸家にすることで、借家権相当の30%を控除することができるため、建築価額の50%以下になる場合もあります。
土地については、貸家があると貸家建付地になり、借地権割合にもよりますが、貸家を満室で賃貸した場合は、更地評価の73%~88%にもなります。一定の要件を満たせば、小規模宅地の特例適用ができ、評価はさらに半分になる場合もあります。

事例検討

1.前提条件
(1)親所有の土地 … 対策なし(遊休地=更地)の場合の相続税評価 1億円
(2)建物の建築価額… 1億円(固定資産税評価額 6,000万円と仮定)
(3)建築資金…1億円を全額借入
(4)借地権割合… 60%
(5)賃貸割合… 100%

2.対策の効果
(1)対策前の相続税評価…1億円
(2)対策後の相続税評価(小規模宅地の特例は考慮していない)
  ① 土地…1億円×(1-0.6×0.3×100%)=8,200万円
  ② 建物…6,000万円×(1-0.3)=4,200万円
  ③ 借入金…1億円
  ④ 差引財産…2,400万円

3.結果 
7,600万円も評価額を下げることができる

デメリットもある

しかし、この方法によるデメリットもあります。
建物から生じる収益は、その建物所有者に帰属します。建物を親所有にした場合は、親の収益が増えるため、その分借入金が減少していきます。その結果、長生きすると相続税の節税効果は逓減していくため、建築当初の相続税の節税効果を享受できないことがあります。

渋谷広志税理士事務所のサービス

ハウスメーカー等からアパート・マンション建築による相続税節税効果の提案を受けることもありますが、どの時点の相続税節税効果かを考えて実行に移した方が良いです。実際に収益物件を建てる際はシミュレーションが大切ですのでセカンドオピニオンとしても当事務所をご利用ください。

 

このコラムは、平成27年2月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。