改正により金銭納付が困難な事例が増えています

平成27年の税制改正により、相続税の基礎控除が4割縮減し、また最高税率も引き上げられたことはご承知おきのとおりです。これにより、相続税の金銭納付が困難となる地主さんが増加する傾向にあります。加えて、土地を売却しその売却資金をもって相続税の納税資金とするスキームの大前提であった、相続税の取得費加算の特例も厳格化され、そのスキーム自体も使いづらくなってきています。そんなときに、注目される納税制度として物納制度があります。

物納制度の概要

相続税の納付は金銭一括納付が原則ですが、5年~20年に亘って年賦延納する特例もあります。しかし、この延納でも金銭納付が困難な場合に相続財産で納付する物納という制度があります。

物納できる財産の種類と順位

物納できる財産は、相続税の課税対象となった日本国内にある財産で、次のようにその財産の種類と物納できる順位が規定されています。
第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
第3順位 動産

但し、「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に規定する特定美術品については、上記順位にかかわらず優先して物納に充てることが可能です。
ここで注目してほしいのは、不動産は順位が第1順位なので、複数の土地を所有している地主さんにとっては物納戦略を選択できます。
とはいっても、境界が不明確な土地や、暴力団等に利用をされている不動産などは物納不適格財産とされており、不動産であれば何でも物納に充てられる訳ではありませんので注意が必要です。

物納の申請書類の提出と提出期限

物納申請書類の提出期限は原則として、相続税の申告期限と同日とされております。一応、物納申請は隣地との境界線の決定など物納適格財産を証明するための事前準備が煩雑で、かつ申請書類も大量になるため、1回につき3ヶ月を限度に最長1年間の延長申請が可能となっております。しかし、この間は金銭納付ができていない状況ですので、その相続税に対して利子税が課されるので留意する必要があります。

物納の許可までの審査期間

物納申請書が提出された場合、税務署長は、その物納申請に係る要件の調査結果に基づいて、物納申請期限から3か月以内に許可又は却下を行います。
なお、物納財産が多数ある場合など申請財産の状況によっては、許可又は却下までの期間を6ヶ月又は最長で9か月まで延長する場合があります。

物納財産の収納価額

物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額になります。
なお、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた相続財産を物納する場合の収納価額は、特例適用後の価額となりますので注意が必要です。

超過物納はOK?

超過物納とは、物納申請税額よりも物納に充てる財産の価額が超過することをいいます。超過物納をした場合、国は超過した分を納税者に還付する必要があるので、原則としてNGです。そのため、不動産の物納については、超過しないにように分筆等して物納申請額以内に収まるように物納します。
 しかし、その分筆等がその自治体の条例等により「最低敷地面積」を下回る場合など税務署長がやむを得ない事情があると認めたときは、超過物納が認められる場合がございます。
 この場合、その超過物納部分は譲渡所得の対象となりますので注意が必要です。

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このコラムは、平成27年10月25日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。